湘南の夏の風物詩、海水浴と波乗りエリアを分ける「白い杭」。秋になると撤去されて、次の夏には新しい杭が建てられる。そんな繰り返しのようで真新しい夏「白杭の季節」を、僕は10年間ポジフィルムに焼き付けて写真集を作った。
その頃、デジタルカメラに思い切って切り替えてみた。すると間合いが変化すると同時に、ファインダーの中に少年達が飛び込んで来た。年齢に関係なく、海ではみな少年に帰るのだ。彼らは、僕の中にある[ Boy’s Summer ]を呼び起こしてくれた。
僕にとって「白い杭」は、今でも夏の主役だが、その手前を横切る少年達が、抜けるような青空、入道雲、花火、台風の波とともに、夏の記憶を深めてくれる。僕の視線は自由にこの海を泳いでいる。
しかし、開発や温暖化の影響なのか、例年通りではない夏ばかりがやって来る。少年に帰る夏は、いつまでも「絵日記の夏」であってほしい。だから僕は、そんな願いも込めて[ Boy’s Summer ]を撮る。地域の大切な資産、守りたい情景、記憶の風景を撮る。